羅臼岳ヒグマ遭遇事故について思うこと
期せずして2連続のクマ関連投稿となりましたが、北海道でトレランを楽しむ者として考えさせられる事案だったので。
事故の概要
2025年8月14日午前、北海道・羅臼岳で、下山途中の男性がヒグマに襲われて死亡するという痛ましい事故がありました。
亡くなった男性のご冥福を心からお祈りします。
当初の報道では、友人と2人で入山していたものの、熊との遭遇時には200mほど離れて行動していたとの報道でした。
何で離れてたんだろう?と不可解に思っていましたが、その後の報道で、被害者は走って下山していたとのことで合点が行きました。
トレイルランニング中であった可能性が高い
ということです。
現場はカーブで見通しの悪い登山道、そして夏にはヒグマの餌となるアリの巣がたくさんできるため、ヒグマ出没多発場所として知られているとのことでした。
その後、現場周辺で親子と見られるヒグマ3頭が駆除され、そのうちの母グマが被害者を襲った個体であることがDNA鑑定より判明しています。
尚、この母グマは地元ガイドや写真愛好家にはよく知られた存在で「岩尾別の母」と呼ばれる、これまで問題行動がない穏やかな個体と認識されていました。
また、報道によると、被害者は熊鈴はつけていたものの撃退スプレーは所持しておらず、友人が携行していたスプレーは助けようとした際に使用を試みたものの、噴射できなかったとのこと。
また、そのスプレーはヒグマに対応した製品ではなかったほか、新品ではなく使用歴のあるものだったそうです。
トレランそのものへ批判の矛先が向くことを懸念
子連れの親グマが餌場にいたところ、山の上から何者かが近づいてくるのを認識した。
聴覚に優れているので、その存在はかなり遠くにいる段階から気づいていたものの、日頃見る登山者と比べると明らかに近づいてくる速度が速い。
それでも親グマ単独ならすぐに藪の中へ身を隠す等できたが、子グマが2頭一緒にいて素早い退避はできない。
そうこうしているうちにその何者かが、カーブを曲がって至近距離に突然現れた。走って、息を切らしながら。
子供への攻撃者!排除せねば!
・・・クマからすればこんな状況だったのでしょうか。あくまで推測ですが。
クマに限らず、子育て中の野生生物は非常に神経質になっていますからね。街中のカラスも、子育て時期は巣に近づく人間を追い払おうと襲ってきます。
ヤフーニュースのコメント欄には非常に多数のコメントが寄せられており、事故への反響の高さが伺えます。
様々な意見がある中、管理人が危惧しているのは
トレイルランニングそのものを否定
する意見が散見されること。
クマに対する知識が無さすぎる、などという声は理解できますが(決して被害者を批判しているわけではありません、悪しからず)、
登山道を走るのは危険行為だとか、わざわざ山の中を走る意味が分からないとか、今回の事件と論点がずれた批判を繰り広げる方がおり、何とも悲しい気持ちになりました。
今後、今までのようには山を走りにくくなるのかも、とも思っています。
われわれトレイルランナーがやるべきこと
ただ、トレランに対して良くない感情を抱いている方が一定数いるのは紛れもない事実であり、それがトレイルランナーの行動・振る舞いに起因しているのもこれまた事実です。
これからも自然の中で楽しく走り続けるために、トレランを嗜む方一人ひとりが今一度自らの行動・山に関する知識について振り返る機会なのではと思います。
クマに関する知識と行動を見直す
そもそも、大前提として
クマと遭遇しない努力が必要です。
(じゃあ山行くな、というのは無しでお願いします)
山に入る前はその地域の出没状況を必ず確認し、
直近で目撃情報があるなら入山を控えるべきです。
今回の事故でも、前々日に別の登山客が付きまとわれる事案が発生していたそうですから。
熊鈴はもちろんマスト。
クマは高い音に敏感とのことなので、音色も工夫した方が良さそうですね。
真鍮鋳物は、高音帯の綺麗な音色が大きく遠くまで響きます。
トレイルランナーは小さく軽いものを好む方が多いですが、大きく重たい物の方が音量は大きいです。
トレーニングの一環として、重ためのものを携行するのもアリでは?
そして、
見通しの悪い場所ではスピードを落とし、警戒する
ことが必要。
カーブ手前で熊鈴を意識的に鳴らすのも効果的かも知れません。
また、常識ではありますが、
食べ物・ゴミは捨てずに持ち帰ること。
学習能力の高いクマは、人間が持っているものはご馳走、とすぐに認識してしまいます。
また、不幸にも遭遇してしまった時の最終手段として、撃退スプレーももはやマストなのでしょう。
ポイントは、
新品を使用すること
(北海道の場合)ヒグマ対応であること
の2つ。
既使用品の場合、ノズルに噴出物等が詰まってしまったり、ガス圧が低くなっている懸念があります。
また、撃退スプレーと言っても千差万別。中には防犯用の対人催涙スプレーを、クマにも効きます、などと謳っている商品もあるのでご注意を。
自衛隊や警察でも採用実績があり、長年にわたって最も使用されているのは、米国製の「カウンターアソールト」です。
記事も併せてお読みください。
【カウンターアソールト】使用期限が切れた熊撃退スプレーが使えるか検証してみた&新しいスプレーを買ってみた【熊一目散】
登山者・ハイカーへの配慮
我が物顔に猛スピードで駆け抜けていくトレイルランナーは確かに存在するんですよね。
こういう山の暴走族みたいな輩がいるからトレランが吊し上げられるわけですが、こういうのはごく一部で大多数のランナーはマナーを守っていますよ、ということを理解してもらうためにも、行動を見直しましょう。
まず、
すれ違う・追い抜く時には一声かけると共に、必ず歩く
これは一番大事。
特に無言で追い抜かれたりすると、クマじゃなくても恐怖を感じます。
管理人も追い抜く際には「すみませーん、左通ります」などと声をかけて歩いて追い抜き、しばらくしてから走りに復帰する、ということを意識しています。
山中においては、登山者がトレイルランナーに道を譲っている姿はよく見ますが、本来は
登山者が優先ということを肝に銘じましょう。
また、
落石やコース逸脱に無頓着なランナーが多いと感じています。
走ることに夢中になって、石を蹴飛ばしながら走ってないか、登山道脇の草花を踏み潰して走っていないかをよく確認しましょう。
この問題については、駆除の是非等、議論が必要なことは山積みです。一朝一夕に結論が出る問題ではありません。
だからこそ、我々トレランが好きで嗜むものは、「自分のできること」についてはいますぐにやるべきだと思うのです。
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